トップ > ポプラブログ

ポプラブログ

認知症と歯周病

| コメント(0)
カテゴリ:

認知症は日本では約460万人、65歳以上の高齢者の約15%が患っているとされています。認知症の約7割を占めるアルツハイマー病アミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質が脳の神経細胞細胞の周りに沈着したり、神経の線維を構成するタウタンパク質(τタンパク質)の変化が脳の神経細胞で起こり神経細胞が死んでしまうことで認知機能障害を生じます。

アルツハイマー病患者の脳内から歯周病菌の一つであるPorphromonas gingivalis (Pg菌)の細胞の外にある毒素の存在が報告されています。また、脳の細胞の5 %以上を占め、脳の免疫を担当するミクログリアがこの毒素により必要以上に働いてAβの産生や蓄積を起こします。

さらに最近の研究からPg菌が血管内に入り込むと脳の外で作られたAβが脳内に入り込み蓄積することが明らかになりました。

歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に入り込み、全身を巡ります。菌自体は体の免疫により死滅しますが、その毒素は残ってしまい、その影響で認知症以外でも糖尿病などのいわゆるメタボリックシンドロームの発症にも関与します。

歯科医による定期的な口腔ケアは、口腔内ばかりでなく全身の健康維持にとって重要です。

口腔内フローラ

| コメント(0)
カテゴリ:

口腔内フローラについて

乳酸菌飲料や整腸剤のコマーシャルなどで腸内フローラという言葉をよく耳にすると思います。フローラとは花畑の意味ですが、細菌がグループを作って住み着き、電子顕微鏡で観察すると花畑のように見えるためそのように呼ばれるようになりました。

口腔内には約500〜700種の口腔内常在菌が存在しており、口腔内フローラを形成しています。口腔内常在菌は主に出生直後に母親など近親者から伝播して形成されます。そのため口腔内常在菌の構成はどの人でも同じではありません。口腔内常在菌の病原性は低く、それぞれの細菌がバランスを取っていずれかが突出して勢力を拡大して感染症を起こすことは通常ありません。

一方で、口腔細菌の中でもP.g 菌(Porphyromonas gingivalis)、B.f 菌(Bacteroides forsythus)、T.d 菌(Treponema denticola)などが歯周病の悪玉菌とされています。したがってこれらの菌数が多い場合は歯周病になりやすく、重篤化する可能性があります。

腸内フローラは肥満や糖尿病、最近話題の潰瘍性大腸炎などさまざまな病気の発症に関わっていることが明らかにされ、「腸内フローラ移植」の研究が行われています。さらに「腸内フローラ移植」とは安全で健康なドナー(提供者)の便から採取した腸内細菌を患者の大腸に投与して元々存在する病気の原因となる悪玉菌を排除するという治療もされています。

現在のところ口腔内においてはドナーからの「口腔内フローラ移植」ではなく、母乳や口腔に由来する乳酸菌であるロイテリ菌プロデンティス株やプロガストラス株を含有したトローチ剤などが使用されています。

 口腔ケアに十分に気を遣っているのに歯周病が進んでしまうという方がいます。このような場合にはご自分でのブラッシングやプロによるクリーニングに加えて「口腔内フローラ」を変えてあげることも重要だと思います。当院で販売しており、一日一回お口に含んで溶かすだけのタブレットです。詳しくは2019年4月11日のブログ;ロイテリ菌をご覧ください。

ロイテリ菌1.jpg

口腔は全身の鏡

| コメント(0)
カテゴリ:

以前、唾液には血液や尿などと同様に身体の情報が含まれているとお話ししました。この他にも全身状態が口腔内の症状として現れることは珍しくありません。

先日「手足口病」の患者が大流行した昨年の1/100になっていると報道されました。これは新型コロナウイルス対策で手洗いなどを徹底しているためと思われます。この「手足口病」はこれから夏の時期に4歳くらいまでのお子さんがかかることが多い全身性のウイルス感染症ですが、文字通り手や足のほかに口腔内に発疹(やぶれてその後口内炎になります)が生じます。

自己免疫疾患である「ベーチェット病」はぶどう膜炎(眼症状)、結節性紅斑(皮膚症状)、外陰部潰瘍(泌尿器症状)に加えて口内炎が主症状となります。高血圧や循環器の状態の悪化により舌下面の血管の腫れが観察されます。また、血液のがんである「白血病」も歯肉出血が初期症状の一つでもあります。

さらに虫歯などが無く、原因がはっきりしない歯痛をよく調べてみると「脳腫瘍」が歯や口腔内の知覚を支配する三叉神経を圧迫していたという症例もあります。その他、麻疹や溶連菌感染症など多数の病気が口腔内に症状を示します。まさに「口腔は全身の鏡」なのです。当院では検診や毎回の治療時に虫歯や歯周病ばかりでなく口腔内を観察して全身状態の把握にも努めています。(出山義昭記)

当院には「口が渇いて・・・」と訴える患者さんが大勢いらっしゃいます。これからの季節、暖房などで乾燥するとお口の中も乾きやすい環境になります。大きな唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺があり、その中でも耳下腺はさらさらな液が分泌され(漿液腺)、お口に潤いを与えます。耳下腺分泌が少ない方にはマッサージをしていただいています。自分でも簡単にできますので、ご紹介いたします。

左の図のように、耳下腺は耳たぶの下から顎のエラ、頬骨にかけて広がっています。唾液が通る管はお顔の後ろ側から前に向かって走行し、出口はお口の中の、上奥歯の頬粘膜(ほおの粘膜)に位置しています。

右の図のように、耳たぶの下から頬骨にかけて指を添え、後ろの指から前に絞るように押します。1.2.3.4の順に後ろから送るように絞ります。マッサージはお食事の前が効果的です。左右にありますので、両方、10回ほど行ってください。

口腔乾燥の原因は様々です。全身的な原因として、脱水や代謝異常があります。唾液腺自体の原因としては、加齢変化、放射線治療による萎縮、炎症による萎縮、唾液分泌神経の障害、その他、口呼吸などがあげられます。マッサージをしても乾燥が改善されない場合には、口腔外科または耳鼻科を受診しましょう。

患者さんからよく聞かれる質問の一つが「ハブラシとフロスはどちらからすればよいですか?」です。

アメリカの歯科医療情報メディアであるDental Tribuneの報告をご紹介いたします。

米国歯周病学会が発行するJournal of Periodontology誌で特集されました。

試験

25名の参加者に①先にブラシで歯を磨き→次にデンタルフロスを使って歯間空隙を清掃;歯ブラシ→フロス

②フロス使用→歯ブラシで歯を磨く;フロス→歯ブラシ の2パターンを異なる時期で行ってもらいました。

結果

歯間および口腔内の歯垢(プラーク)の量は②フロス→歯ブラシ法を行ったときに有意に減少しました。

考察

研究者らはフロッシングは歯間の細菌と残屑を解きほぐし、次にブラッシングを行うと口内を水ですすぐ際にこれらの粒子をさらに口内から取り除くことができると主張しています。

米国歯周病学会の会長で歯科医師であるSteven R Daniel氏は、「この試験ではフロスの後にブラッシングを行うことで口腔内の歯垢が減少する可能性を示しているが、全ての人にとって笑顔のある健康を維持するためには、忘れずに両方を毎日行うことが重要です」と話しています。

当院では患者さんの日常生活に合った指導をするようにしております。毎日フロスも歯ブラシもしっかりしている方であれば、この研究のようにフロスから行ってもよいでしょう。フロスをしているうちに時間がなくなったり、面倒になってしまう可能性もあります。そのような場合には、毎食後の歯ブラシはキチンとしていただき、一日一回でもよいのでフロスを加えてもらうように申し上げます。長年の習慣を変えることは、大人になればなるほど難しいものです。その方のライフスタイルに合わせ、より無理なく続けられる方法を一緒に摸索していきます。今回の研究結果が参考になれば幸いです。

1  2  3