歯が凍みる・欠けている
むし歯ではないと言われたけど「歯が凍みる」「欠けているように見える」のは?
Tooth Wear(トゥース・ウェアー)とは
これまで「う蝕」(むし歯)、「歯周病」が二大歯科疾患と言われてきました。最近では健康な歯質(歯を構成しているエナメル質、象牙質(ぞうげしつ)、セメント質など)がむし歯ではなく、何らかの原因で溶けたり、欠けたりするTooth Wear(トゥース・ウェアー):「歯の損耗(そんもう)」が加わって、三大疾患と言われています。
Tooth Wearの種類
- 咬耗(こうもう)症(attrition)
歯と歯が接触(咬み合う)ことにより歯質がすり減ること - 摩耗(まもう)症(abrasion)
歯以外の原因により歯質の一部が失われること - アブフラクション(abfraction)
咬合力が原因でエナメル質とセメント質の境目に生じる歯質の欠損 - 酸蝕(さんしょく)症(erosion)
むし歯菌ではなく、酸によって歯質が溶ける病気
原因、症状、処置・対策
咬耗(こうもう)症(attrition)
原因
通常の生活や環境では病的に削れていくことはありません。
歯ぎしり・咬み締める・上下の歯を接触させる癖がある方、硬いものを食べる頻度が多い方は進行が速いです。
症状
歯の咬む面が削れるため、エナメル質の象牙質が露出(ろしゅつ)し黄色く見えます。ほとんどの場合は無症状ですが、咬み合わせが変わっていくため、顎に痛みを感じることがあります。
処置
さらにすり減らないようにマウスピースを装着する、咬む面を金属などで覆うなどの対策をします。
摩耗(まもう)症(abrasion)
原因
歯磨きの力が強い、毛が硬いなどがあります。
症状
歯が減っていきます。進行すると歯と歯茎の境目の部分がえぐれた様になることがあります。歯磨きの時や、冷たい飲食物で凍みることがあります。
処置
歯磨きの力や圧力のかけ方、当て方、歯ブラシの毛の選び方を一緒に考え指導しています。凍みる場合には凍み止めを塗布、またはレジンで覆います。
アブフラクション(abfraction)
原因
咬む力が強いために、歯ぐきから出ている根元の部分に応力が集中して歯質がはがれていく病気です。
症状
歯磨きの時や、冷たい飲食物で凍みることがあります。
処置
歯質がさらにはがれないようにマウスピースを装着する、凍みる場合には凍み止め塗布、はがれた部分をレジンで埋めたり、被せもので覆ったりします。
酸蝕(さんしょく)症(erosion)
酸蝕(さんしょく)歯(し)とは
歯の表面をコーティングしているエナメル質は、pH5.5より低くなると溶け始め、高ければ守られます。「酸による歯質の欠損」のうち「細菌が関与しない酸」によるものが酸蝕症です。酸蝕症になった歯のことを酸蝕歯と言います。
原因
- 胃酸
逆流性食道炎などによる反復性嘔吐、胃酸の逆流、食物の反芻癖などがあります。胃酸のpHは1.0~2.0ですから、逆流症によって簡単に酸蝕が起こります。
内科での治療をお勧めします。 - 飲食物
原因となりやすい酸性の飲食物(pH)
・かんきつ類 3~4
・酸性飲料(お酢 3.1、梅酒2.9、りんご酒、炭酸飲料2.2など)
・サラダドレッシング 3~4
・酢漬けの食品、ワイン2.8~3.8です。
症状:痛みはなく、歯に白い斑点が見られたり、象牙質が透けて黄色く見えるなどの見た目の違いがあります。
対処法:摂取方法や量をコントロールします。嗜好品やお身体のためにとっている飲食物の場合には、摂取する時間帯を短めにする、すぐに歯磨きやうがいをするなどの工夫をすると良いでしょう。 - 薬剤
粉状のビタミン剤(アスコルビン酸:ビタミンC)などを水で溶かすとpH 4.1程度になります。歯に付着したままにしておくと酸蝕歯が進行しやすくなります。
対処法:粉から錠剤に替え、すぐに歯磨きやうがいをしましょう。
処置・対策
酸蝕症に侵された歯は酸性に対する抵抗力が低くなり、放置すると神経症状をおこすことがあります。予防には原因の除去と歯質強化が必要です。
歯質の強化:フッ素塗布をお勧めします。フッ化物により、歯の再石灰化と同時に、エナメル質を構成するハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトに置き換わり、酸性に対する抵抗力が高くなります。歯磨き粉にフッ素が含まれているものを選ぶと良いでしょう。
唾液は中和作用がありますので、唾液腺をマッサージして刺激したり、十分に咬む習慣をつけることにより唾液の分泌は活発になります。キシリトールのデンタルガムを咬むのも有効です。治療として、レジンで埋めることもあります。
歯が凍みたら早めに歯科医院を受診しましょう
歯が凍みる、といっても様々な原因や病気があります。原因が何かわかることで進行を遅らせたり、凍みを防ぐことができます。皆様の大切な歯を守るために、生活習慣の改善点や必要な治療のご提案をします。ご来院時、お電話、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。